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0017 教師の言葉遣い|子どもの言語環境を整備する言語感覚

子どもの言葉の芽生え

「先生、聞いて、聞いて!」と駆け寄る子どもは、教師が問いかける前に、楽しかったことやうれしかったことを自然に話し始めます。心に残る経験や感情が積み重なると、子どもはそれを言葉にして表現したくなるのです。

このような「話したい」という気持ちを育むためには、一人ひとりの感性や知的好奇心を大切にし、日常生活の中で驚きや発見、疑問、感動を体験させることが何よりも重要です。そして、その思いや考えを記録したり伝えたりする際には、子ども自身の言葉で表現させることが大切になります。

教師の役割

子どもにとって最も身近な言語環境は教師です。教師の言葉遣いや話す内容、読書への姿勢は、子どもに大変大きな影響を与えます。

例えば、幼児期に家族から読み聞かせを受けた子どもは読書好きになります。同じように、教師が本の話をよくする学級では、子どもたちも自然と本を読むようになります。

教師が場面や目的に応じて言葉遣いを変えれば、子どもも状況に応じた言葉の使い方を学びます。板書を丁寧に書けば、子どもも文字の書き順や丁寧さに注意するようになります。さらに、朝や帰りの会で教師が読んでいる本や心に残る言葉を紹介すれば、子どもは言葉や本への関心を高めます。

つまり、子どもの言葉の力を育む最大の環境は、教師自身なのです。教師が自らの言語感覚を磨き、言葉の力を高めることが不可欠です。

魅力的な教師に必要な力

子どもの前で生き生きと話せる魅力的な教師になるためには、次の二つの力が求められます。

(1)プレゼンテーション能力

• 自分の考えや意見を整理し、分かりやすく伝える力。

• 文部科学省は「思考力・判断力・表現力等」の一部として位置づけ、論理的な説明や資料を活用した説得力ある表現を重視しています。

• 国語科の「話すこと・聞くこと」や社会科・理科などの発表活動を通じて育成されます。

(2)コミュニケーション能力

• 他者との協働や対話を通じて理解を深める力。

•「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」の中で重視され、他者の意見を尊重し、協力して課題を解決する力として定義されています。

•「生きる力」の要素として、思いやりや協調性を持って行動する力が位置づけられています。

プレゼンテーション能力は「発信力」、コミュニケーション能力は「双方向性」として互いに補い合い、未来社会を生きるための基盤となります。

教育課程における位置づけ

学習指導要領は「社会に開かれた教育課程」を掲げ、プレゼンテーション能力とコミュニケーション能力を通じて、未来社会の創り手となる資質・能力を育むことを目指しています。

文部科学省は、両者を相互に高め合うものとして教育課程に組み込み、子どもたちが論理的に表現し、他者と協働して理解を深める力を育成することを重視しています。

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