Q 教師になって3年目です。始めて中学校3年2組の学級担任になりました。来週は保護者会があります。保護者会の目的と工夫のポイントについて教えてください。また,保護者会を開く際の留意点についても教えてください。(中学校教諭 27歳 男性)
保護者会は,保護者との連携を深める絶好の機会です。 また,学校の教育活動の理解を促進するまたとない機会です。しかし,保護者会に対する苦手意識や準備不足などから,形式的に済ませてしまうということも少なくありません。保護者には,忙しい時間をやり繰りして学校に来ていただくのですから,この機会を有効に使いたいものです。
目次
保護者会の目的と工夫のポイント
(1) 保護者会の目的
保護者会には,「定期的な保護者会と,事件や事故, 学級経営に関するトラブルなどの緊急事態に開かれる「緊急保護者会」とがあります。定期的な保護者会は,年度初めや学期の終わりなどに学級ごとに開かれます。また,学年合同の保護者会の後に,学級ごとの保護者会が開かれる場合もあります。定期的な保護者会の目的には,大きく次の4つがあります。
Advice ◇保護者会の4つの目的
① 教師の児童・生徒に対する姿勢や思いを理解してもらう。
教師の教育に対する思いや経営方針を理解してもらうことが何より大切である。そのために,一般論ではなく,「自分はこの学級をこうしたい」「こんな児童・生徒になってほしい」といったことを具体的に伝えることが必要である。
② 教師と保護者との信頼関係を深める。
保護者会は,教師と保護者が温かな人間関係を深める場としたい。教師が困っていることや保護者が悩んでいることをお互いに出し合い,信頼関係をつくることが,児童・生徒を支援する上では何より大切になってくる。
③ 保護者同士の関係を深める。
保護者同士も仲よくなれる機会としたい。保護者同士が仲良くなり,知り合いなれば,連携が生まれる。それによって、教師と保護者が一緒になって児童・生徒を育てていこうという気持ちが一層強くなる。
④ 児童・生徒の思いや様子を情報交換する。
教師として,児童・生徒の様子を保護者に伝え,理解や協力をしてもらわなければならないことがたくさんある。一方,保護者自身もわが子の成長を願い,子育てに日々悩んでいる。児童・生徒が何を思い, 考えているのかなど,児童・生徒を話題の中心において,お互いに情報交換する時間を確保することが 大切である。
(2) 保護者会の工夫のポイント
保護者会に参加し「今日は,来て得をした」と思われる話を,教師として一つでも多くすることが大切です。また,保護者会に出て楽しいと感じたり,充実感を味わったりしてもらうためには,「知的な情報」が必要です。
例えば,何かができない児童・生徒に対して「家庭でも努力させて ください」とだけ言っても伝わりません。「何を,どのように,どのくらいやれば,どのようによくなるか」を具体的に話すことが大切です。「それぐらいだったら,うちでもできる」「たったそれだけで,そんなに効果があるのならやってみよう」と思わせることが大切です。ここでは,保護者会の3つの工夫のポイントを挙げましょう。
Advice ◇保護者会の3つの工夫
①「事前の準備」としての工夫のポイント
■ 教室の環境美化
教室の清掃や掲示物などをきちんと整頓しておくのは当然であるが,花を飾るなどリラックスした雰囲気づくりに努める。
■ 座席の配置の工夫
お互いの顔がよく分かるように,ロの字形や円形など,座席の配置を工夫する。お互いが名前で呼び合えるように,名札や各机上に名前カードなどを用意しておくとよい。
■ 配布資料の作成
重点をおいて伝えたいことなどは,資料を準備しておくと話し合いが明確になる。配布資料としては,レジュメ,指導方針,学校行事の要項,学級通信,児童・生徒の意識調査,生活アンケート結果,感想文などを準備するとよい。また,児童・生徒に関する新しい情報をより多く提供するように努める。
■ 児童・生徒の様子が分かる掲示物や作品など
児童・生徒の学習の成果や作品などを展示・掲示したり,児童・生徒の諸活動のビデオを上映したりするなど,アトラクションを企画してみるのも保護者にとって 楽しみなものになる。
②「温かで和やかな雰囲気づくり」としての工夫のポイント
■ 保護者による司会進行
時には,保護者に司会進行をお願いすることにより,発言が活発になったり雰囲気が和んだりする。
■ 教師自らが自己開示
担任自らが,積極的に自己開示することにより,保護者も本音を出しやすくなる。
■ ゲームや構成的グループ・エンカウンターなどの実施
ゲームなどにより,場の雰囲気を和やかにし,コミュニケーションをとりやすくする。また,構成的グループ・エンカウンターのエクササイズを行うと本音を引き出しやすくなる。
■ 保護者の発言の機会
発言していない保護者にも一言お願いするなど,負担にならない程度に,多くの保護者に発言してもらう機会をつくる。
③「実りある話題の提供」としての工夫のポイント
■ タイムリーな話題
学校行事,学習予定や学習状況など,適時適切なホットな話題を選ぶことが,保護者会への関心を生むことになる。そのことによって,「また保護者会に出席してみたい」という思いにつな がる。
■ ニーズに合った情報
事前に要望を聞き,保護者のニーズに合った情報を用意しておくことも,教師の専門性に対する信頼を得ることになる。例えば,児童・生徒の発達段階や心理状態に合致した話題,進路情報,新聞や教育雑誌のコピー,講演会やイベントの情報などを用意しておくとよい。
■ 児童・生徒を褒める
保護者にとって,わが子が褒められることは,無条件にうれしいものである。できるだけ多くの価値尺度をもって児童・生徒を見つめ,それを保護者にも伝える。
■ 子育てのヒント
家庭教育で参考になることを話題にする。例えば「小遣いはどのように,いくらぐらい渡せばよいのか」「テレビを見る時間が多くなると,児童・生徒の生活にどのような変化が見られるか」など。ともに児童・生徒を育てていくという姿勢を保ちつつ,大事な情報を知らせるという姿勢を崩さないようにする。
■ 学習に関する報告
授業でどのように指導しているのかを実際に見せ,その効果を知らせる。例えば「漢字の覚え方」「ミスを防ぐ計算の方法」など。なぜそうするのか,そうすることによってどのような利点 があるのかを,具体的な児童・生徒の姿を通して知らせる。
■ 児童・生徒の意識,考え方
学級や学年の児童・生徒にアンケートを取り,その結果について知らせる。
周りの保護者にどのように思われるかという不安と,子育てに対する責任感が強いあまり防衛的な気持ちが働いて,なかなか全体では発言できない保護者もいます。保護者会の後は大切な個人面談の機会と捉え,あらかじめその旨を伝えて,時間をとるようにします。
保護者会を開く際の留意点
保護者会は,保護者と学級担任との連携の基本となる機会です。この機会に保護者との信頼関係を築くことができれば,学級経営も安定していきます。
保護者会では,まず和やかな雰囲気づくりを心がけます。その上で,学校の教育方針や学級担任としての教育方針などを分かりやすく話します。その際,児童・生徒の具体的なエピソードを話したり,保護者から引き出したりするなど,保護者にとって「収穫」になるようにすることが大切です。また,1年間互いに協力し合って児童・生徒を育てていくとの思いを共有できるよう運営します。
Advice ◇保護者会の留意点
■ 最初の印象が肝心
善きにつけ悪しきにつけ,教師は第一印象で判断されがちなので,よい印象を与えたい。教育に対する姿勢,児童・生徒への思い,言葉遣いや服装など,細かな部分まで気を配る。
■ 教師自ら傾聴する姿勢
学級担任からの一方的な伝達だけでなく,保護者の発言に耳を傾け,その意見を生かして話を進めるようにする。「うなづき」の動作は相手によい印象を与える。どのような意見に対しても,尊重し受け入れる姿勢が大切である。
■ 即答ができない場合
保護者の要望や質問などで即答できない場合は,管理職に相談した後,後日回答することを約束する。
■ 偏りなく公平に
特定の保護者とばかり話さず,多くの保護者にまんべんなく声をかけるようにする。
■ 欠席者への対応
資料配布だけでなく,保護者会の様子や意見などについて,学級通信を活用して伝えることが,次回の参加を促すことになる。
■ 構成的グループ・エンカウンター
新年度初めの保護者会では,雰囲気を和らげ,人間関係づくりをするために,構成的グループ・エンカウンターを取り入れるとよい。
保護者には個々の事情や見解があることを理解し,常に謙虚に話を聴きます。学級での困った事案ばかりを話したり,家庭に注文をつけたりするだけで解決策を示さないことのないように留意します。