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0010 教師の言葉遣い|教師の言葉遣いは、子どもたちの言葉を育て、子どもたちの心を育む人的環境

教師の言葉遣いは、子どもたちの言葉を育て、子どもたちの心を育む人的環境

子どもの瞳に教員の微笑みやうなづきが見えるとき、子どもは自分も大切な一人なのだという安心と実感の中にいます。子どもの気持ちを読み取りながら進める授業には、分かる楽しさ、学ぶ喜びが溢れています。このような授業を展開するためには、この子を授業のどの場面でどのように活躍させ、なんとしてでも力を伸ばすのだという強い覚悟が教員になければできません。子どもに寄り添うとはこのことです。

ところで皆さんは、話の終わりは「です。ます。」の言い切りになっていますか。

これは、論旨の明確な話し方をするためのキーワードであり、めりはりのない話し方から抜け出すキーワードでもあります。快い発生、はっきりした発音は子どもの聞く姿勢を変え、心の在り様を変えます。子ども自らがおだやかで明せきな話しぶりに変わっていきます。

声と言葉が大切にされる学校生活が思いを伝え合う言葉の力と心を育てます。乱暴で激しい声や人の関係を断ち切る言葉は子ども達にも自分の心もいらつかせ、すさんでいきます。このため、教員の「話す力」は極めて重要です。

まず、自分の声や話す癖を知ることが必要です。普段の授業と朗読している声を録音し、「です。ます。」を使っているか、どんな響きの声なのか、自分で確かめたり第三者からの感想をお聞きしてみてはどうでしょう。「まあー」「えー」「あのー」など意味のないつなぎ言葉、「じゃね?」「ていうか」「やばい」など一般的にいうことが雑な言葉、驚くほどの早口、押し付けがましい強い語尾などの口癖はありませんか。

相手に自分の言葉を伝えるための言葉ですから、当然互いに「同じ言葉」の存在が有効です。子どもと教員は、信頼という見えない糸を時間を重ねるなかで紡いでいます。ですから教員と子どもとが互いに使う言葉の根は、同じなのです。

ですから、教員の言葉遣いとは、子どもたちに対する敬意をあらわす心の表れなのです。その基盤となるのは、人としての品格です。それは考え方や行動に表れますが一番伝わってしまうのが「言葉遣い」です。子ども達に対する心が表れるからです。子ども達に対して尊厳をもち、一人の人間として対峙する教員と、子どもだから教えてやっているんだという教員とでは、言葉遣いが全く違います。

言葉は使い手の心が現れるものです。言葉は相手との心のやり取りなのです。一日中一緒に過ごし、目の前にいる教員は子どもにとっての言葉を育てる、心を育む人的環境としての存在なのです。

正法眼蔵随聞記(しょうぼうげんぞうずいもんき)※1』の中に、「霧の中を行けば、覚えざるに衣しめる。よき人に近づけば、覚えざるによき人となるなり。」とあります。

ここでいう善き人とは、教員のことです。教員の教養と品のある言葉遣いで、子どもたちの言語環境を整えたいものです。そうでなければ、「同化」などいつまでたってもできないでしょう。


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