「学んだ知識を実践に活用するために必要な力」
吉川英治氏は幼少の頃、家が貧しく、小学校を中退し小僧、印刷工、給仕などの職を転々としました。従って、彼にはこれという師もいなかったそうです。兄弟子、書物、人の話など接するものすべてを我が師と仰ぎ、そこからいろいろなことを学び取っていたのです。
印刷工の時代などは、百科辞典のゲラを50回も丹念に読んだとも言われております。英治氏は、「学んだ知識を活用するために必要な力と、自分の考えを表現するための豊富な語彙」をこのようにして身に付けていったのです。
私たちは言葉を通じてものごとを認識し、考え、心を育んでいます。「国語に関する世論調査」(平成23年度文化庁)で最近、日本人の日本語能力が低下しているという意見がありますが、そのことについてそう思うか、それともそう思わないかを「書く」「読む」「話す」「聞く」のそれぞれについて尋ねた。
「低下していると思う(計)」は、「書く力」で87.0%(非常に低下していると思う36.8%、やや低下していると思う50.2%)、「読む力」で78.4%(非常に低下していると思う20.2%、やや低下していると思う58.2%)と特に高く、「話す力」で69.9%(非常に低下していると思う19.5%、やや低下していると思う50.5%)「聞く力」で62.1%(非常に低下していると思う13.2%、やや低下していると思う48.8%)でした。
このように、日本語の力が落ちてきていることは、とりもなおさず、日本人の心、日本の文化が低下し、ひいてはOECD学力調査結果からも分かるように、児童生徒たちの読解力低下をもたらしていると言えるのではないでしょうか。
今、社会では「基礎学力」や「コミュニケーション能力」など「学んだ知識を実践に活用するために必要な力」が求められています。
経済産業省は社会が求める「学んだ知識を実践に活用するために必要な力」を「社会人基礎力※1」と名付け、
①一歩前に踏み出す力(アクション)
②現状を分析し、疑問を持ち、考え抜く力(シンキング)
③意見の違いや立場の違いを理解し、多様な人々とともにチームで働く力(チームワーク)
を挙げています。

教師となり、人前で生き生きと話をすることのできる魅力的な話し手となるためには、「コミュニケーション能力」と「プレゼンテ―ション能力」を身に付ける必要があります。 そのためには、基盤となる日本語力を日ごろから意識して修行することが、回り道であるようにみえて、結果的には最短距離になるのです。
※1「社会人基礎力」とは、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されており、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年に提唱しました。

社会人基礎力の3つの能力/12の能力
「人生100年時代」や「第四次産業革命」の下で、2006年に発表した「社会人基礎力」はむしろその重要性を増しており、有効ですが、「人生100年時代」ならではの切り口・視点が必要となっていました。
こうした状況を踏まえ、平成29年度に開催した「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」において、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力を「人生100年時代の社会人基礎力」と新たに定義しました。



社会人基礎力の3つの能力/12の能力要素を内容としつつ、能力を発揮するにあたって、自己を認識してリフレクション(振り返り)しながら、目的、学び、統合のバランスを図ることが、自らキャリアを切りひらいていく上で必要と位置づけられます。
