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0016 学級経営力を高めるために|「学級通信」の作り方

Q 校長先生から,4年2組の学級担任を拝命しました。そこで,初めて「学級通信(学級便り)」を作りたいと思います。 どのような内容を取り上げたらよいのでしょうか。また,どのような点に留意したらよいのでしょうか。 (小学校教員 30歳  男性)

学級通信(学級便り)には,「行事予定や提出物などの重要な情報を伝達する」「児童・生徒の生活の様子や成長した姿を紹介する」「教師の思いや価値観を伝える」など,さまざまな内容を掲載します。例えば,小学校の低学年では,週の予定や持ち物など,きめ細かな情報提供を通して,児童や保護者の不安を軽減することが必要です。一方,小学校の高学年や中学校では,児童・生徒の姿を通して教師の思いや指導方針を伝え,家庭での話題として 考えてもらえることが大切です。いずれにせよ,学級通信は「読む人の心に伝わる」ことで,児童・生徒や保護者,地域との信頼関係を深める重要な意義をもちます。

「学級通信」の作り方

(1) 読みたくなるための工夫をする

○ 全文を読まないと内容がつかめないような記述は避けます。端的に内容がつかめる「表題」や「見出し」を付けると効果的です。新聞の「表題」や「見出し」を参考にするとよいでしょう。

○だらだらと長い文章は禁物です。箇条書きや図表を用いて,読みやすい表現を工夫しましょう。

○写真やイラストなどを適切に配置すると,視覚的に引き付ける効果があります。

〇週1回や月2回など,無理のない頻度を決め定期的に発行する。

Advice

◇「家庭学習での一工夫」や「児童・生徒をやる気にさせる親の声かけ」など, 家庭で役立つ内容を掲載すると,感想が届けられたり話題を提供されたりして,保護者との連携が深まる。

(2) 目的と相手意識を明確にして内容を精選する

○「行事予定の連絡」「提出物の依頼」「活躍した児童・生徒の紹介」などの伝達,「今後取り組んでいきたいこと」「児童・生徒の言動に対する値打ち」「見つめ直すべき姿」などの投げかけなど,学級通信を発行する目的を明確にします。

○目的と相手意識から,必要な内容を精選したり表現を吟味したりします。一回の通信に,あれこれと多くの内容を盛り込まず,必要な内容を端的に表現することを心掛けましょう。

Advice  

◇保護者に伝えるのか,児童・生徒に読み聞かせるのか,相手を明確にして内容構成を考えること。ただし,児童・生徒に読み聞かせる場合でも,保護者に伝わることを前提として作成しよう。

(3) 読む人が満足できる内容を構成する

○ 伝達事項であれば,必要な内容が過不足なく記述されているかを確認します。 ○ 児童・生徒の姿を紹介する場合,その姿の何がよかったのか,どのような値打ちがあるのかを明確に意味付けます。本人と保護者が勇気付けられ,他者も今後の目標として受け取れることが大切です。

○ 学級の課題や問題点を投げかける場合は,「児童・生徒や学級の成長を願い,児童・生徒と一緒に困難に立ち向かう」という,教師の熱い思いが伝わることが何より大切です。

Advice

  • 個人が特定されるようなマイナス面の姿を書くことは避ける。学級担任の指導意 図が誤解されて受け取られる危険性が高いからである。必要があれば,口頭で伝えるなどの配慮をすること。

「学級通信」の具体的な内容

(1) 学級担任の思いを児童・生徒にぶつける 〜「先生は,どんなときに君たちを嫌いになるか」〜  

教師の思いは,授業を通してこそ児童・生徒の心に伝わります。ある日,Y先生は担任している児童・生徒への思いを伝えるために,「先生は,どんなときに君たちを嫌いになるか」をテーマにした授業を行い,それを学級通信に書きました。次のような授業展開です。

  1. 「先生は,どんなときに君たちを嫌いになるか」,児童・生徒に予想を書かせる。
  2. 出された予想をすべて黒板に書き,児童・生徒にはそのうちの1つを選ばせる。
  3. 児童・生徒の予想を1つずつ消していき,最終的にはすべて消す。
  4. 児童・生徒の驚きの声を受けて,教師からのメッセージを伝える。  

この授業の意図を,Y先生は次のように学級通信に綴りました。

Example

「先生は,どんなときも君たちを嫌いにならない」というメッセージを伝えることで,児童・生徒を少しでも安心させたいと思い,この授業を行いました。叱るということと,嫌いになるということは違うということを理解してもらいたかったのです。  

学級担任の思いを,授業を通して児童・生徒に伝え,それを学級通信で保護者にも伝えたかった,という例です。

(2) 子育ての視点を示す 〜「今川義元流 むごい教育とは」~

子育てに悩みをもたない保護者は皆無です。だからこそ,子育てに対する保護者の不安に応えるような内容を学級通信で取り上げる意義は大きいのです。

Example

「今川義元の話です。義元から「竹千 代(後の徳川家康)には,むごい教育を せよ」と命じられた家来が,粗末な食事を与え,ほとんど休みなしで武術を教え込む生活をさせたところ,義元が大変怒って言ったという言葉が次のように紹介されています。

「人質の竹千代には,朝から晩まで海の幸や山の幸あふれる贅沢なご馳走を好きなだけ与えてやれ。寝たいと言ったら,いつでもいくらでも寝かせてやれ。夏は暑くないように,冬は寒くないようにしてやれ。学問がいやだと言うならやらせるな。何事も,好き勝手にさせたらよい」  

最後に,今川義元はこう言ったそうです。「そのようにすれば,たいていの人間はだめになるから」

この例では,歴史上の人物のエピソードを効果的に活用して,保護者に子育ての重要な視点を示しています。多くの保護者が納得するような子育ての視点を示すこと は,家庭の教育力を高め,それは学級経営の基盤になります。

(3) 保護者と叱る基準を共有する 〜「先生が叱る3つのこと」〜  

叱り方によって,教師と児童・生徒の人間関係は大きく影響されます。叱るという行為は,教師にとってさえ難しいのですから,保護者にとってはなおさら難しいこ とです。ですから,一歩間違うと児童虐待に発展しかねない危険性もはらんでいます。そこで,教師の叱る基準を明確に示し,保護者と共有することには大きな意味があります。そこで,Y先生は「先生が叱る3つのこと」と題して,次の3点を挙げました。

  1. 目標に向かって全力を尽くさないと
  2. 卑怯なことをしたとき
  3. 誰かを傷つけて喜んでいるとき  

そして,この3つについては,具体的に説明を加えました。例えば,③については次のように示してあります。

Example

「いじめ,悪口,陰口,嫌なことを書いた手紙回しなど,それをやる方は『楽しい』かもしれません。でも,こうしたことを許していたら,学級も学校も崩壊します。何より,それをされた児童・生徒は,たまったものではありません。この学級では,③は絶対に許しません」  

叱る基準を示し,これを守れない児童・生徒には厳しく対処する。このような教師の凛とした姿勢が,学級に安定感をもたらすのです。

読む人の心に伝わる「学級通信」にするための7箇条  

学級通信は,配慮が欠けると教師に対する不信感を招くことになります。個人情報に十分留意するなど,常に読む人の思いに立ち,厳しく自己を見つめ直す姿勢をもちましょう。

①目的と相手意識を明確にもち,本当に必要な内容を分かりやすく端的に記述しているか。

②素晴らしい姿として紹介する児童・生徒や保護者に対し,意図を伝えて承諾を得ているか。

③紹介する児童・生徒に偏りがないか確認するなど,学級の全員が平等に位置付く努力をしているか。

④誤字・脱字,誤報,個人が特定できる 負の姿,誤報を招く表現をなくすために,何度も読み返しているか。

⑤価値観の一方的な押し付けや,発行回数だけにこだわるなど,教師の自己満足で終わってないか。

⑥学年主任や管理職に提出し,自ら事前指導や事後指導を受け,内容の向上に努めているか。

⑦学級通信に対する保護者の意見を求めるなど,読む人の心情を受け取る努力をしているか。

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