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0019 学級経営力を高めるために|家庭訪問の目的と留意点、不登校児童・生徒への家庭訪問

家庭訪問は,児童・生徒の家庭環境や家庭生活などを直接保護者を通して知り,学校における指導に役立てるとともに,保護者との相互理解や信頼関係を深め,あわせて具体的な指導について理解と協力を求めるためのものです。

学校によっては,ある期間,全校一斉に行ったり,必要に応じて行われたりします。いずれの場合でも,訪問して実際に見聞きしなければ分からないことなどを把握するとともに,保護者の児童・生徒への接し方や育て方,期待などについてよく聴き,指導に生かすことが大切です。

1. 年度始めの家庭訪問

(1) 家庭訪問の目的  

家庭訪問は,児童・生徒が生活している家庭の様子や雰囲気,地域の様子などを知る大切な機会です。また,保護者にとっても,わが子について担任と直接話ができるまたとない機会です。児童・生徒に対する理解を深めるとともに,保護者との信頼関係を築くことになる家庭訪問を,有意義に行いたいものです。
家庭訪問には,次の5つの目的があります。

Advice ◇家庭訪問の5つの目的

【家庭での様子を把握】
生活のリズム,家庭の雰囲気,家庭での会話,学校での満足度,成育歴上での問題などについての情報を得る。

【家庭での心配な点などを把握】
保護者や家族への態度,家庭での役割,身体上の心配な点などについて情報を得る。

【学校での様子を保護者に報告】
学校生活での児童・生徒像,よい点や褒められる行動,家庭への協力要請事項などについて情報提供する。

【学級経営や指導方針を伝達】
児童・生徒に対して望むことや伸ばしたいことを伝える。保護者に安心感を与え,相談が受けられる信頼関係に努める。

【通学路の確認と安全点検】
通学方法と通学の所要時間,通学路の危険個所を確認する。

(2) 家庭訪問のポイント

家庭訪問は,児童・生徒の生活を知り,保護者とつながる第一歩です。学校でのかかわりや取り組みには,児童・生徒の生活基盤である家庭とのつながりを抜きにしては成果に結び付きません。
家庭訪問をする際には,次の4つのポイントがあります。

Advice ◇家庭訪問の4つのポイント

【訪問をする日時の調整】
事前に保護者の希望を聞き,日時を調整しておく。どうしても都合のつかない家庭の場合は,家庭訪問期間から日にちをずらすことも検討する。

【褒めることを用意する】
学校での具体的な姿・様子について,褒めることをまとめておく。そのために,一人一人の児童・生徒について,多方面から観察し,よいところや頑張っているところを見つけ,整理しておく。

【保護者の思いや願いを十分に聴く】
保護者は新しい担任が話をよく聞いてくれる人なのか,一方的に話をする人なのか,今後どのようなかかわりをもてるかなどを見ている。
まず,保護者に話をしてもらえるよう「最近,気になることはありませんか」「おうちではどうですか」などという言葉を話の糸口にしてみるとよい。

【児童・生徒の特徴を肯定的に伝える】
たとえば「落ち着きがない子」といったわが子に対する保護者の否定的な見方を,「活動的でいろいろなことに関心をもっている児童・生徒」などと肯定的な見方で伝える。そのことにより,保護者は,わが子への新たな視点を発見することができ,教師への信頼感も生まれてくる。

(3) 家庭訪問の留意点

保護者の否定的な言葉や拒否的な態度など,表面的な表れの奥底にある真意を読み取ることが大切です。保護者の置かれた厳しい状況やこれまでの経験が,そのような表現をさせてしまっている場合があります。

家庭訪問には,次の8つの留意点があります。

Advice ◇家庭訪問の8つの留意点

【時間を守る】
予定通りに訪問することが基本。「たかが5~10分の遅れ」かもしれないが,待っている保護者の気持ちを考える。予定より大幅に遅れてしまう場合には,必ず連絡を入れる。

【人の批判はしない】
前年度の担任など,他の職員や学校の批判はしない。また,他の児童・生徒やその家庭に対する批判になる話題も避ける。

【訪問中はメモをとらない】
原則的に,家庭訪問中に安心した雰囲気でゆっくり話を聴くために,メモはとらない。終了後に記録し,整理しておくことで今後の指導に生かす。ただし,緊急性や重要性が伴う事項などは,その場でメモをとる。これにより,かえって信頼関係を築くことができる。

【服装,挨拶,言葉遣いなどに留意する】
最初が肝心,礼儀と節度をもって訪問する。スーツが基本。身なりは清潔に。

【判断しにくいことは,後日答える】
学級担任として即答できないことについては,管理職に相談して後日返答する。

【保護者の悩みにはしっかり耳を傾ける】
保護者の悩みに誠意をもって十分耳を傾ける。よき聞き役の第一条件は微笑みを忘れないことである。微笑みは相手を安心させ,話してみたいと思わせる。また,相づち,驚き,促しなども大切である。

【実情を正しくつかむ】
教師は話し手でなく,聞き手にまわる方が収穫が多い。

【公的な訪問であることのけじめをつける】
なれなれしい態度は慎む。校内の秘密事項は漏らしてはならない。

2. 臨時の家庭訪問

登校しぶりが見られたり,事故やトラブルなどがあったりした場合は,対応が遅れるほどこじれることが多いものです。そこで,管理職と相談の上,迅速に保護者と連携をとることが大切になります。

その際の留意点は,6つあります。

Advice ◇臨時の家庭訪問の6つの留意点

【前もって連絡を入れる】
訪問の際には,事前に保護者に連絡を入れ,了解を得る。訪問する時間帯などは保護者の都合に合わせる配慮が必要である。

【事実関係を正確に伝える】
臨時に家庭訪問をした理実関係を整理して正確に伝える。学級担任として,訪問の目的が達せられるように,事前に話し合う内容を考えておく必要がある。

【十分話を聴く】
保護者から,日ごろの児童・生徒の状況や学校への要望などについて十分話を聴かせてもらい,これからのことについて,保護者と共に考えていくことを確認する。

【家庭内の事情に立ち入りすぎない】
子育ての価値観が違うのは当然だと考えて対応する。そうでないと,知らず知らずのうちに押しつけがましい態度になり,話し合いにならない場合がある。

【謙虚で親しみのある態度で接する】
何よりもまず相手の話を聴こうとする姿勢が大切。相手への関心を示す態度は,言葉以外の面でも「傾聴」の態度が大切になる。児童・生徒のよい面をできるだけ報告するところから始める工夫が必要である。

【学校の問題を軽々しく口にしない】
話をする中で,学校の批判などが出てくることがある。聞くことは聞くが,絶対に同意してはならない。「そうですね」と言えば同意したことになる。「そうですか」と言えば同意したことにはならない。誤解されやすい言い回しは避ける。

3. 継続の家庭訪問(不登校対応)

不登校が本格化すると,児童・生徒や保護者にとって一番心配なことは,学校と関係が切れてしまい,孤立してしまうことです。そのため,不登校の児童・生徒やその家庭には,何らかの形で関わり続けることが大切です。

そのための留意点としては,5つあります。

Advice ◇継続の家庭訪問の5つの留意点

【児童・生徒と仲良くなる】
家庭訪問は,教師の鎧をすてて,児童・生徒と仲良くなることを最大の目標にする。一方で,節度が必要である。

【保護者の笑顔を引き出す】
保護者の不安な気持ちを理解し,希望を引き出すことを目標にする。

【相手の気持ちになって聴き,話す】
児童・生徒の回復度や保護者の心情をリサーチした上で,自分の言葉がどう相手に伝わるかを想定したり,相手の心に響くように練り直してから伝えるようにする。

【訪問は,短時間でも継続する】
家庭訪問は,学校と家庭を繋ぐ大切なものである。家庭訪問が「学校ではあなたの登校を待っているよ」というメッセージを含んでいることを忘れないことである。
児童・生徒と会えないときには,保護者との関係づくりに重点を置き,短時間でも家庭訪問を継続するようにする。

【児童・生徒と一緒に活動をする】
話を聴こうと思っても,何も話さない児童・生徒もいる。児童・生徒の心が動かないときは,一緒にゲームや運動をするなどして体をほぐすようにするとよい。

4. 不登校児童生徒への家庭訪問に関する基本シナリオ

「初回訪問」「継続訪問」「状況が悪化した場合の訪問」について、学校現場でのリアリティと心理的安全性を両立させた内容で示します。

(1)【初回訪問】不登校が始まった直後の家庭訪問

目的:関係づくり・安心感の提供・状況把握
時間:10〜15分程度

① 訪問前の基本姿勢

  • 原因追及ではなく、まずは安心できる関係づくりを最優先とする。
  • 本人に会えなくても焦らず、家庭のペースを尊重する。
  • 保護者の不安や困り感を丁寧に受け止める姿勢を明確にする。
  • 学校の価値観を押しつけず、協働的な姿勢で臨む。訪問前の心構え

② 玄関での第一声

教師 「本日はお時間をいただきありがとうございます。短い時間ですが、最近の様子をお聞かせいただければと思っています。」

■ 児童・生徒が顔を見せた場合

教師 「無理に話さなくて大丈夫だよ。顔を見られて嬉しいよ。」
   → 長居せず、すぐに引き上げる。

➂ 保護者との対話(安心感の醸成)

教師 「最近、学校に行くことが難しい日が続いているようですが、ご家庭ではどのように過ごされていますか。」

保護者「朝になるとお腹が痛いと言って…。どうしたらいいのか分からなくて。」

教師 「毎朝そのような状況に向き合われているのは、ご本人にとってもご家族にとっても大変なことだと思います。まずは無理に登校を促すより、落ち着ける環境を整えることが大切だと考えています。」

④ 状況把握のための質問(非追及型)

  • 「最近の生活リズムはどのような様子ですか」
  • 「好きなことや、落ち着ける時間はありますか」
  • 「学校で気になっていたことはありましたか」
  • 「困っていることや、学校に望むことはありますか」

※「原因は何ですか」「なぜ行けないのですか」などの追及的質問は避ける。

⑤ 学校として伝えるべきこと

教師 「学校としては、登校のペースを急がず、〇〇さんの気持ちを大切にしながら関わっていきたいと考えています。また、学校とのつながりが途切れないよう、短時間でも定期的に訪問や連絡を続けさせてください。」

⑥ 締めの言葉

教師 「今日はお話を聞かせていただきありがとうございました。無理のない範囲で、また様子を伺いに来させてください。」

(2) 継続訪問(不登校が続いている段階)

目的:関係維持・安心の継続・小さな変化の共有
所要時間:5〜10分

① 訪問時の基本姿勢

  • 「会えなくても訪問する」こと自体がメッセージとなる。
  • 本人に会えたら良いが、会えなくても問題ない。
  • 保護者の負担にならない短時間訪問を徹底する。

② 保護者との対話(関係の深化)

教師 「最近の〇〇さんのご様子はいかがでしょうか。小さなことでも構いませんので、変化があれば教えてください。」

保護者「昼間は少し元気になってきた気がします。」

教師 「それは大きな前進ですね。ご家庭で安心して過ごせている証拠だと思います。」

会話例(保護者との関係づくり):児童・生徒に会えた場合の声かけ

教師「元気そうな顔が見られて嬉しいよ。今日は無理に話さなくて大丈夫だからね。またゲームの話でも聞かせてね。」

 ※長時間話そうとしない
 ※「学校に来られそう?」などの圧力を感じる言葉は避ける

➂ 学校からの選択肢提示(押しつけない)

  • 「プリントだけお渡ししてもいい?」
  • 「オンラインで短い面談を試してみる?」
  • 「保健室登校や別室登校という選択肢もあるよ」
  • 「午後から短時間だけ学校に寄る方法もあるよ」

  ※決定は本人と家庭に委ねる。

④ 締めの言葉

教師 「また短い時間ですが、様子を伺いに来させてください。〇〇さんのペースを大切にしながら、一緒に考えていきたいと思っています。」

(3) 状況が悪化した場合の訪問(昼夜逆転・引きこもり傾向・家庭の疲弊など)

目的:負担軽減・支援体制の再構築・孤立防止
所要時間:10分以内

① 訪問時の基本姿勢

  • 「責めない」「焦らせない」「比較しない」を徹底する。
  • 保護者の疲れや困り感を丁寧に受け止める。
  • 支援機関の紹介は押しつけず、あくまで選択肢として提示する訪問時の姿勢

② 保護者との対話(負担の受容)

保護者「もうどうしたらいいのか分からなくて…。昼夜逆転で、声をかけても怒るだけで。」

教師 「毎日その状況に向き合っておられるのは、本当に大変だと思います。まずは、お母さん(お父さん)が少しでも楽になれる方法を一緒に考えていきたいです。」

➂ 支援の選択肢提示(情報提供)

  • ICTを活用したバーチャル登校
  • スクールカウンセラー
  • スクールソーシャルワーカー
  • 相談支援センター
  • 医療機関(必要性が高い場合)
  • 別室登校・段階的登校

教師 「すぐに利用しなくても大丈夫です。選択肢として知っておいていただければと思います。」

④ 締めの言葉

教師 「〇〇さんのペースを大切にしながら、学校としてもできる限り支えていきます。ご家庭だけで抱え込まなくて大丈夫です。」

不登校児童生徒への家庭訪問は、単なる状況確認の場ではなく、「学校と家庭がつながり続けるための生命線」として機能します。初回訪問では安心感を届け、継続訪問では関係を絶やさず、小さな変化を共に喜び、状況が悪化した場合には家庭の負担を軽減しながら支援の再構築を図る。どの段階においても、教師が大切にすべきことは、児童生徒と保護者のペースを尊重し、責めず、焦らせず、孤立させない姿勢です。

家庭訪問を通して届けられる「あなたのことを気にかけている」「一緒に考えていく」というメッセージは、児童生徒と保護者にとって大きな支えとなります。学校が継続的に寄り添い、関係を紡ぎ続けることこそが、不登校支援の根幹であり、回復への道を開く確かな力となるのです。

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