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0022 今、教師に求められていること|確かな学力を構成する「8項目」を毎時間の授業で育てるために

「確かな学力」とは、単に知識を覚えることではありません。子どもたちがこれからの社会を生き抜くために必要な、確かな学力を構成する8つの力の総体です。この8つの力を、授業の中でどう育てていくのか。そして、なぜ今、それがこれほど重視されているのか。その理由を、法令・学習指導要領・生徒指導提要の流れに沿って考えてみたいと思います。

1. 「確かな学力」を構成する8項目

新学習指導要領の基本的なねらいは[生きる力]の育成。各学校では,家庭,地域社会との連携の下,[生きる力]を知の側面からとらえた[確かな学力]育成のための取組の充実が必要。
各学校では,家庭,地域社会との連携の下,[生きる力]を知の側面からとらえた[確かな学力]育成のための取組の充実が必要。

【出典:文部科学省「1 新学習指導要領や学力についての基本的な考え方等」平成15年10月7日】

まず、確かな学力を構成する力は、

の8項目です。この8項目は、文科省が2000年代から示してきた学力観であり、現在の学習指導要領の基盤になっています。

ここで大切なのは、「知識・技能」は学力の土台にすぎず、学力の完成には思考力・判断力・課題発見・学び方・意欲といった「活用の力」が不可欠です。

児童生徒が自分で考え、判断し、表現し、課題を見つけ、解決しようとする。その一連の営み全体が「確かな学力」です。

2. 法的根拠:学校教育法30条2項

では、なぜ私たちはこの確かな学力を構成する8項目を育てる必要があるのでしょうか。その根拠は、学校教育法第30条2項にあります。条文にはこう書かれています。

基礎的な知識・技能を習得させ、それらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力 その他の能力を育み、主体的に学習に取り組む態度を養うことに特に意を用いる。

この条文を、確かな学力を構成する8項目に対応させると、次のようになります。

つまり、確かな学力を構成する8項目は、法律が求める学力そのものなのです。私たちが日々の授業で育てようとしている力は、法律の理念としっかりつながっています。


3. 学習指導要領・次期学習指導要領との接続

現行の学習指導要領では、育てるべき力を次の3つに整理しています。

  1. 知識・技能
  2. 思考力・判断力・表現力
  3. 学びに向かう力・人間性等

この3つの柱は、確かな学力を構成する8項目をより整理・統合した枠組みです。
そして次期学習指導要領の議論でも、「資質・能力の3つの柱の継続」「『生きる力』の理念の深化」が明確に示されています。つまり、「確かな学力」は、これからの教育の軸であり続けるということです。

4. 国立教育政策研究所(国研)が示す学力観

国研は、学力を次の3層で整理しています。

  • 見える学力(知識・技能)
  • 見えにくい学力(思考力・判断力・表現力)
  • ほとんど見えない学力(意欲・粘り強さ・学び方)

【図:見える学力・見えにくい学力・ほとんど見えない学力】

授業改善で大切なのは、「見えにくい学力」「見えない学力」をどう育てるかという視点です。テストでは測定しにくいが、学習を左右する重要な力です。

テストで測れる力だけを育てていては、子どもたちの未来を支える学力にはなりません。むしろ、授業の中での「問い」「対話」「振り返り」が、見えにくい学力を育てる鍵になります。

5. 生徒指導提要が示す「学び」と「生徒指導」の一体性

生徒指導提要では、「学び」と「生徒指導」は切り離せないものだと示しています。

確かな学力を構成する8つの要素は、授業だけで育つわけではありません。日々の「子どもとの関わり方」「声かけ」「学級経営」「友達関係づくり」といった生徒指導の場面の中でも、「学ぶ意欲」「課題を見つける力」「学び方」などの力は確実に育っていきます。つまり、生徒指導は学習指導と同じく資質・能力の育成を目的とした教育活動です。生徒指導そのものが子どもの学びを支える大切な営みであり、授業と生徒指導は一体となって子どもの成長を支えているのです。

6. 授業で確かな学力を構成する8項目を育てるための実践ポイント

ここでは、毎時間の授業で確かな学力を構成する8項目を育てるための具体的なポイントを示します。

① 思考力を育てる

「授業の最初に『問い』を置く」、「どうしてそう思ったの?」と理由を聞く、「別の考え方はある?」と複数の視点を促す。「答えよりも、考えた道のりを大切にしよう」と声掛けをする。

② 判断力を育てる

「2つの資料を比べて選ばせる」「解き方を選ばせる」「自分の考えを選択させる」「どちらがよいと思う?その理由も教えて」と声掛けをする。

③ 表現力を育てる

「ペアで説明する時間をつくる」「1分間スピーチ」「ノートに図や言葉でまとめる」「自分の言葉で説明してみよう」と声掛けをする。

④ 学ぶ意欲を育てる

「小さな成功体験をつくる」「できたところを具体的にほめる」「選べる課題を用意する(選択課題)」「ここまでできたね。次はどれに挑戦する?」と声掛けをする。

⑤ 知識(理解)を育てる

「ポイントを絞った説明」「図や具体物を使った理解」「ICTで視覚的に示す」「今日の大事なポイントはここだよ」と声掛けをする。

⑥ 技能(操作・方法)を育てる

「反復練習(短時間でOK)」「ステップ学習(易→難)」「個別の補充課題」「できるようになるまで一緒に練習しよう」と声掛けをする。

⑦ 学び方(学習方法)を育てる

「ノートの取り方を教える」「調べ方を教える」「振り返りの書き方を教える」「どうやって調べたらいいかな?」と声掛けをする。

⑧ 課題発見能力を育てる

「気になることを付箋に書かせる」「友達の意見を聞いて疑問を広げる」「生活や社会の問題と結びつける」「この中で、もっと調べたいことはどれ?」と声掛けをする。

理科の授業では、学力を構成する8項目を育てるための実践ポイントは次のようになります。

① 思考力 → 観察・実験の結果から考える力
② 判断力 → 比較し、選び、結論を導く力
➂ 表現力 → 図・言葉・式で説明する力
④ 学ぶ意欲 →「もっと知りたい」と思う気持ち
⑤ 知識 → 理解の概念、用語、法則
⑥ 技能 → 観察・実験の方法、器具の扱い方
⑦ 学び方 → 調べ方、記録の仕方、まとめ方
⑧ 課題発見能力 →「なぜ?」と問いを作る力

7. 授業の流れに「確かな学力を構成する8項目」を自然に組み込む方法

明日からの授業ですぐに実践できるように、1時間の授業の流れに落とし込むと次のようになります。これは、どの教科でも応用可能です。

【授業の流れと育つ力】

① 導入(5分)
• 問いを提示 →「思考力」
• 予想を立てる →「判断力」

② 展開(30~40分)
• 調べる →「学び方」
• 話し合う →「表現力」
• 比べる →「判断力」
• まとめる →「思考力」・「表現力」

③ まとめ(5分)
• 今日の学びを振り返る →「学ぶ意欲」
• 次の課題を見つける →「課題発見能力」
• 個別課題(必要に応じて)
• 基礎 →「知識・技能」
• 発展 →「思考力」・「判断力」

確かな学力は、「生きる力」の中でも「知の部分」を支える大切な土台です。子どもたちが自分の人生を、自分の力で切り開いていくための基盤になります。そして「確かな学力」は、特別な授業だけで育つものではありません。毎日の授業の中で積み重ねられる、小さな工夫と経験の集まりです。たとえば、「1つの問いかけ」「1回の話し合い」「1分間の振り返り」「1つの選択課題」「1つの成功体験」こうした小さな場面が、子どもの学力を大きく伸ばしていきます。

学習指導要領、次期学習指導要領、生徒指導提要、そして国立教育政策研究所が共通して示しているのは、「子どもが主体的に学び、考え、表現し、協働し、学び続ける力を育てる教育」です。つまり、子どもが自分で学びをつくり出し、仲間と関わりながら成長していくことこそが、これからの教育の中心にあるのです。

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